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『週休3日制』『どこでもオフィス』など働き方改革に挑戦、「社員の幸せと利益向上を両立させたい」―宮坂学ヤフー社長

八牧浩行    2017年3月13日(月) 8時50分

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宮坂学ヤフー社長が日本記者クラブで会見し、同社の働き方改革に関する制度や取り組みについて、『週休3日制』や『どこでもオフィス』などに挑戦し、「社員の幸せと利益向上を両立させたい」と強調した。写真は会見する同社長。

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2017年3月10日、宮坂学ヤフージャパン社長が日本記者クラブで会見し、同社の働き方改革に関する制度や取り組みについて、『週休3日制』や『どこでもオフィス』などに挑戦し、「社員の幸せと利益向上を両立させたい」と強調した。発言要旨は次の通り。

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インターネットの進歩は凄まじい。この20年でハードディスクの容量、速さなどは1000倍、1万倍になった。ありとあらゆるものがインターネットで済ませることができ、日常的な生活に入り込み、インターネットのない生活は想像できない。

◆人々を幸せにしているのだろうか

ただ(技術の進歩は)人々を幸せにしているのだろうか。「人々を幸せに」というのが、ソフトバンクヤフージャパンが属するソフトバンクグループの理念。日本は世界幸福度調査であまり上位に位置していない。便利になったのにストレス障害などが増えている実感がある。便利度は上がったが、幸福度に関してはあまり変わっていないのはなぜだろうか。

戦時中は生き残りのために必死で、戦後の混乱期は食べていくのに懸命だった。高度経済成長時代はいろんなものが欲しいから働いた。若い世代ではもっと世の中ために役立ちたいとか他の人を幸福にしたいという人が徐々に増えているのではないか。

情報技術で人々の社会の土台を変えていくのが、ヤフーのミッション(使命)だ。昨年創業20周年を迎えたが、(この間に)社会の土台を変えて便利にすることは、まあできたと思う。一方で人々の課題を解決して幸せにつなげられたか、経営者としてあまり自信がない。働く人については情報技術を使ってもっと便利に仕事ができるようにしたい。充実感や幸福感を得られる会社をつくれないか考えている。

日本の人口の2人に1人に相当する約6000万人が長い時間を会社や組織で過ごしている。勤務時間は年間約1800時間。平均通勤時間の一日1時間40分を加えると2000時間を超えてしまう。年間の生活の3割を仕事で費やされる計算だ。働く人が充実して幸福感を持って仕事ができるようにならなければならない。ヤフーとしても試行錯誤しながらやっている。

人事制度で大事なのは社員が肉体的に安全であること。心から安心して働ける場所 仕事を通じて暮らしていくための経済的なメリットを得られること。その上で自分のやりたいことができ、才能や情熱を解き放つことができる環境をつくる。そして仕事が世の中に貢献できるものになることだと考える。

もちろん大きな利益が出る会社にしたいが、会社だけが利益を出して社員がへとへとになるのは避けなければならない。一方で社員は楽しくやっているが会社は利益が出ないというのもよくない。2つを両立できるよう、難しくても連立方程式を解くような経営に挑戦したい。

◆万全な健康管理へ、自ら「主任責任者」に就任

社員の心身を健康な状態に保つことは最低限の目標であり、「CCO(チーフ・コンディショニング・オフィサー)」という役職を新設して私が就任した。統計では日本の労働者の30%の人が疲れ、睡眠不足の人が多いというデータがある。社員証で決済する社員食堂で使用する皿はすべてに無線タグをつけており、総カロリーや塩分、栄養価などの履歴を自分でいつでも確認できる。10年ぐらい経てば健康診断の結果との相関関係が分かり、メタボ警告も出せるようになる。

「テクノロジー」による働き方の変革も進めている。昨年10月から社員の新幹線通勤を解禁した。パソコンやスマホの活用により通勤時間も貴重な労働時間に替えられる。

職場は、本社というリアルな場所ではなくクラウド上にある。時間にも場所にも縛られない『どこでもオフィス』を導入した。月に5日、会社でも自宅や喫茶店でも、生産性を発揮できる場所で働ける。もちろん会社でもよく選ぶ権利がある。登記上は東京だが、勤務地はクラウド。テクノロジーを使えば生産性を上げられる。

今年4月からは、育児や介護などを行う社員を対象に、希望者には『週休3日』などの勤務形態を選択できるようにする。介護などへの対応の余地が広がり、辞めなくても済むケースもあると思う。

社員がやりたいことをやれるような仕組みや制度にしたい。やりたいことなら努力しても辛くない。会社の中で少しでもやりたいことが実現できる場所をつくりたい。『ヤフーアカデミア』という第2の学校をつくり やりたいことを見つけられるようにした。やりたいことに挑戦できるよう希望部署への移動を申告できる『ジョブチェン』制度も導入した。

◆上司が週に一回部下と面談

「情報の交差点」となるよう、オフィスの机はあえて直線的には配置せず、ジグザグにレイアウト。歩いていれば思わぬ人と出会って会話が始まる。社外の人も参加できる『コワーキングスペース』も設けた。本社が紀尾井町にあるので、中央官庁の人も活用している。オフィスを発信基地にしたい。様々な手数(枠組み)を多くアップデートしていきたい。

(フレキシブルな働き方は「人事評価」が難しいのではないかとの問いに対し)悩ましいところだが、上司が週に一回は部下と1対1で面談する機会を設けた。これまでは年に数回しかなかったが、コミュニケーションは密になった。どこに座っているかよりも部下との会話を通じて、きちんと把握しているかが重要である。社員自身の成果と同時に他の社員やチームを支援したかも評価の対象としたい。1人当たりの利益率を上げることは重要であり、利益向上と社員の幸せを両立させたい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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