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<コラム>政策を無視し環境を汚染し続ける中国人、一体何のためか?

内藤 康行    2017年3月6日(月) 15時10分

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先日出張で北京に行った。公道は相変わらずの渋滞、スモッグもすごく喉がいがらっぽく感じた。写真は北京。

先日出張で北京に行った。公道は相変わらずの渋滞、スモッグもすごく喉がいがらっぽく感じた。市内への移動中、大気汚染を起因とする疾病障害はすでに1000万人に達し、うち死亡者は年間20万人以上という民間環境観測センターの報告を思い出した。政府の公式な発表はない。

大気汚染の2大主因として、1つに石炭焚きの火力発電所や工業生産の燃焼装置から排出される煤塵(ばいじん)が考えられ、次に自動車の排ガスが主因と言われている。この中で、筆者が注目したのは自動車の排ガス汚染だ。

公道を走る車両を見ていると、排ガス規制や罰金もお構いなく、我関せずの「廃車寸前」、或いは「すでに廃車同然」の車両が縦横無尽に走っている。ちなみに中国の自動車保有台数は2016年時点で7000万台に上り、廃車台数は270万台だった。廃車台数は2020年に900万台に達するとの予測があるが、実際の廃車すべき車両はこの程度の台数ではないだろう。生活がかかっているためそう簡単に「愛車」を手放す訳がないのからだ。

2015年、中国政府は環境汚染対策の一環として半ば強制的な、「水質汚染対策行動計画」(通称「水十条」)と「大気汚染対策行動計画」(通称「気十条」)を矢継ぎ早に公布し、地方政府に実行責任を課すとした。昨年には、「土壌汚染対策行動計画」(通称「土十条」)、も公布され、即日施行した。

国が環境汚染対策を施行したが、廃車すべき車両が車検を不法にスルーし堂々と現役で活躍し、大気汚染を深刻化させている。国の「大気汚染対策行動計画」はどこ吹く風状態だ。これも全ては食べるためなのである。

廃車解体工場に訪れた。そこでは、国産車、外車、トラクター、パトカー、バイク、クレーン車など、さまざまな車両が広大な敷地に山積みとなっており、再利用可能な部品の仕分けをしている。このうち有効活用率が高く、販売価格もいい部品は、やはり外車と関係者は言う。再生できない、あるいは買い手がつかない部品はそのまま野積みされたままだ。風雨に晒され、汚染物質や有害物質は地中へと流れ込んでいる。

廃車処理で、特に環境に敏感なのはオイルタンク内やエンジン内部にある廃油だが、解体場では廃油はそのまま地面に排出され地面は油だらけだ。この廃油は土壌汚染だけでは済まず、地下に浸透し地下水をも汚染する。中国の飲用水資源は地表水と地下水に依存する。全国にある1330カ所の飲用水源中、4分の3を地表水に、4分の1を地下水に依存している。廃油には重金属などの危険物質が含まれており、人体に深刻な影響を与える。

廃車解体1つにスポットを当てても、中国が抱える三大汚染対策対象である「大気汚染」「水質汚染」「土壌汚染」の縮図が見える。

環境汚染に目をつぶり世界の経済大国となった中国は、この大きな代償をどう捉えているのか。国策と住民感覚の乖離(かいり)は大きく、環境修復や環境保護への道は改善ではなくさらに険しさを増していると感じる。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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