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<コラム>日本には「小さな親切」がたくさんある、人生の「得」と「損」は計算できないもの

黄 文葦    2016年11月12日(土) 19時10分

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日本において、人生の「得」と「損」は何でしょうか?資料写真。

日本において、人生の「得」と「損」は何でしょうか?

私は中国の大学のマスコミ専攻を卒業した後、数年間中国の新聞社に勤めた。社会主義と資本主義のジャーナリズム理論を両方把握してみたいとの思いから、日本留学の道を選んだ。日本での暮らしは十数年になり、時には冒頭のように自問していた。

今、年に多くても2〜3週間ぐらいしか中国に滞在しない。ほかの時間はほぼ日本で過ごす。かつて中国滞在中に、元上司に「もし君が中国を去らなかったら、現在、君の経済力は日本にいるよりもっと高いのではないか」と言われた。その瞬間、正に私の人生の「損」が指摘されたような気がした。それは否定しない。昔の同僚たちの暮らしぶりは豊かである。2、3か所の高額物件を所有する人も少なくない。

一つの例を挙げよう。2002年、中国の文化財保護法が改正され、個人でも文化財を自由に売買できるようになった。その時から、中国のある古き友人が頻繁に日本と中国を行き来している。日本で「宝を探す旅」を続け、いわゆる、日本にある中国の古美術品を買収し、中国に持ち帰り高値で売るという仕事をしている。このような仕事を十年間続けたことで、億万長者になった。その友人は日本語をあんまり喋れない。いつも通訳者を雇って、文化財所有者の自宅を訪問、或いはオークションでパドルを挙げる…。

私は、友人に「なぜ、そんなに早くそのビジネスチャンスを掴んだのか」と聞いた。「中国では、お金を儲ける情報はとても大切だ。自分が「これは儲かる!」と判断したら、すぐに行動しなければならない。ちょっとでも遅くなると、あっという間に大勢の人に追い抜かれる」という答えであった。確かに、現在は中国人観光客に向けの「古美術品探し旅ツアー」も開催されているほどの人気ぶりである。

その抜群なビジネス感覚を敬服せずにいられない。自分は日本で暮らしていて、日本語ができるのに、なぜ「古美術品」という「富」を掴められなかったのか、こんな自嘲をしてもしょうがない。勿論、私のビジネススキルは友人にちっとも及ばない。

中国に帰って、「日本の暮らしはどうですか」と親友に聞かれたら、私は「日本の生活は相変わらず平凡で…」と答える。ただ、親友たちはいつもさまざまな情報を教えてくれた。別荘を買ったとか、株を売ったとか、高級車を買ったとか、再婚したとか…私は親友との情報交換はかなり非対称状態になっている。特にお金に関する情報に皆が興味津々で、堂々と自分の財産を明言する人が少なくない。久しぶりに会う友達の典型的な挨拶は「どこでお金を儲けているの?」である。そう言えば、私が中国と離れた十数年間、中国は確かに著しく変わった。この中で一番変化するのは、人の心であるかもしれない。自信と緊張感に満ち溢れる人たちである。

日本のマスコミはよく「激動の中国」という表現を使っている。現在の中国は、確かに「激動」という形容詞が相応しい。例えば「激動の時代」や「激動の人々」等の言葉である。

近年、中国にいる知り合いの多くが日本旅行に来ている。「日本と中国の距離が段々縮まってくる。大都市の風景が段々似てくる」という見方をする人が増えている。国のGDPで言えば、中国は既に日本を超えた。しかし、庶民の暮らしは、ただの数字では説明しきれない。

さて、現在の中国と日本の「差」はどこにあるのか。そういう質問を、私は日中両国の友人に尋ねる。よく一致することは、中国と日本の「差」が細部にあるということ。長年中国で仕事している日本人のビジネスマンの見解によると、中国の都市発展はとにかく拡大志向・開発志向で、ずっと華やかで現代的だが、細部と人に配慮する日本とは方向が違う。

私はそれに同感である。例えば、中国では、高速列車はますます快適になってきたのだが、駅構内の施設はまだ日本の駅と比べものにならない。日本の多くの駅のホームには待合室と売店がある。それは利用客にとってはとても便利である。中国の駅にはほとんどない。

中国では大都市の高速列車駅には、エスカレーターとエレベーターがほぼ設置されている。しかし、ちょっと小さなところ、或いは数年前に建設した駅には、エスカレーターとエレベーターがないところが多いようである。あるいは、エレベーターがスタッフ専用のものになり、客が利用できない。

私の友人の一人が日本旅行に来て、ある「細部」に気づいた。日本の店員さんがお釣りを客さんに渡す際に、一枚ずつ数えて見せる…その真面目さに感心したと言われた。日本では、このような「小さな親切」がたくさんある。

人生の「得」と「損」は、計算できないもの。私は日本から中国に行くとき、中国から日本に戻るとき、いずれも「帰る」と言う。どこへ行っても「部外者」だが、よそ者の立場から世間を観察したら、どこでも新鮮な感覚を覚える。中国のスピード感と日本の繊細さ、中国人の自信と日本人の慎重を常に頭の中で浮かべたり、合わせたりする。

私が日本に来て、一番「得」なことはやはり頭の中に、「日本語のチャンネル」ができたこと、人生の一番大きな出来事だと思う。また、「文化相対主義」という視点を持つようになった。世の中にはさまざまな考え方や行動様式があることを前提として認識し、その違いを中立的に捉えようとすることである。それもジャーナリストにあるべき立場だと考えられる。

また、日本に来て悟ったことや愛国の概念を自分なりに解釈したい。一つの国だけを愛することも、複数の国を愛す気持ちも愛国だと言えると思う。私にとっては、愛国は日本と中国、二つの国を愛することである。

普段、日本で平凡な幸せと悩みを味わい、たまに中国に帰って、さまざまな激動の瞬間を受け、そして日中比較の文章を書いている。これが私の人生の運命か、それとも使命であろうか。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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