欧州銀の経営不安、低金利による収益悪化が背景=リーマンショック級の金融危機は再来するか?―金融庁長官

八牧浩行    2016年10月14日(金) 6時10分

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12日、森信親金融庁長官が講演し、ドイツ銀行の経営不安説が欧州の金融市場を揺らしていることについて「欧州でも金利が下落しているので、銀行の収益性減退への懸念が欧州の銀行に対する不安につながっている」との認識を示した。

2016年10月12日、森信親金融庁長官が「金融行政の現状と課題」と題して、日本記者クラブで講演した。ドイツ銀行の経営不安説が欧州の金融市場を揺らし、同銀を巡っては米司法省による巨額の和解金請求という新たな悪材料もくすぶっていることについて、「資産がクリーンになっているか、不良債権問題がまだ解決されていないのではないかなどの懸念が背景にある」と指摘。「欧州でも金利が下落しているので、銀行の収益性減退への懸念が欧州の銀行に対する不安につながっている」との認識を示した。

リーマンショック(2008年)型の金融危機到来の可能性に関しては、「(各国とも)金融規制を強化しているので、銀行は以前に比べはるかにか安定して来ている」としてリーマンショック級の危機は避けられるとの見方を示した。ただ(1)シャドーンバンキング(影の銀行)、(2)新たなテクノロジーの発展に伴うサイバーセキュリティ、(3)人間を介さない機械による取引が巨大化した――などの問題点を列挙。その上で、「グローバル化の進展の中で巨額資金が一つの企業から急速に動くようになった」と警告した。

「今は世界中の低金利がリスクになっているが、OPEC(石油輸出国機構)の減産合意で原油価格が1バレル60〜70ドルになる可能性もあり、異なった様相を呈してくる。次のクライシスがどう発生するか分からない。小さな変化を見逃さずに、大きくなった時にどう影響を及ぼすかを見定める必要がある」と強調した。

また「かつて日本の不良債権問題は土地への集中に起因した。分割投資し、常にリスクに備えるべきだ」と言明。「最後に頼りになるのは自己資本なので、自己資本比率規制を強化しており、金融危機の引き金を引くようなことはない」との見方を示した。

森信親長官は、低金利と人口減少で経営環境が厳しい日本の地銀業界について、金融機関は規模が大きいほど経営が安定すると述べた上で、「小さくて特徴のない金融機関が一番の問題だ」と問題提起。こうした地銀に対し、「再編を含め持続可能な体制づくりを促している」と明かした。一方で「特徴があれば小さくても存続できる」とし、「特色のある地銀経営」を求めた。

ここ数年、地銀の間では経営統合による再編が相次いでいるが、森長官は「単に持ち株会社をつくって2つの銀行をぶら下げる方式は、それだけならコストが増えるだけ」との見方を示し、「再編ありきでなく、経営の効率化につなげられるかがカギ」と強調した。

また「銀行と企業の考えにはギャップがある。金融機関は相変わらず担保と保証に頼っている」と苦言を呈した。その上で「地元に密着して顧客をよく理解し、関係を築いている銀行は安定した経営を実現している」と力説した。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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