Record China 2015年12月1日(火) 9時50分
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「新常態」に移行した中国経済は引き続き世界経済に大きなインパクトを及ぼしている。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がこのほど東京都内で開いたセミナーで、森永正裕北京事務所長が報告した。
「新常態」に移行した中国経済は引き続き世界経済に大きなインパクト(強い影響)を及ぼしている。国家戦略備蓄の積み増しを背景に、今年の原油輸入量は過去最高水準を記録し、原油価格の下支え要因になっている半面、メタル(非鉄金属)取引所の乱立は市場かく乱要因になり兼ねない状況だ。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がこのほど東京都内で開いたセミナーで、森永正裕北京事務所長が報告した。主な要旨は以下の通り。
◆15年の成長率は目標の「7.0%」前後を維持か?
「新常態」は昨年5月、習近平国家主席が河南省を視察したときに使った言葉。成長率の低下を容認して、むしろ成長の質を高めていこうという趣旨だ。普通の国は法律ができて政策だが、中国は上の人が何かをしゃべると政策になる。「新常態」はその典型的な例だ(今年3月の全国人民代表大会では「新常態」をキーワードとする政府活動報告が採択された)。
2014年の中国の経済成長率は7.3%と前年の7.7%から鈍化した。減速の主な要因は(1)地方政府を中心とした投資の減速(2)第2次産業(製造業)の伸び悩み(3)世界経済の回復の遅れによる輸出の下押し圧力―の3点だ。とりわけ、やみくもな不動産開発に伴い巨額の銀行借り入れで資金繰りが苦しくなったことと中央政府による反汚職摘発で地方政府がほぼ機能停止状態に陥ったことが大きく響いた。
今年前半の経済成長率(第1、第2四半期とも7.0%)は、金融セクターが下支えた。中心は個人の株式取引だ。個人の株式投資用新規口座開設数(上海証券取引所+深せん証券取引所の合計)が昨年暮れから急増した。昨年7月までは毎月100万戸以下だったが、12月には約410万戸、今年4月は約1580万戸に上った。5月、6月も高水準だった。
今年後半は予算法改正により直接債券発行が認められた結果、地方政府の資金繰りが改善した上、李克強首相が地方政府に対し、必要なプロジェクトの早期実施を促し、実施しない場合は罰する懲罰制度を導入したことで地方政府が動き出しており、地方財政支出も戻ってきた。国家発展改革委員会の公表では、今年1〜9月に交通インフラ関連84件9906億元を筆頭に合計218件1兆8131億元の固定資産投資(都市部の設備投資と建設投資の合計)プロジェクトが認可された。
この結果、今年第3四半期の成長率は6.9%とやや鈍化したものの、15年通年では何とか目標値の「7.0%」前後を維持するのではないか。
◆国家戦略備蓄を背景に原油輸入は過去最高に
中国は石油(原油)戦略備蓄(SPR)を進めており、石油市場に大きな影響を与えている。同国の備蓄計画は03年4月にスタート、04年3月から第1期備蓄基地整備計画が始まった。備蓄基地整備は第3期まで公表されている。
第1期で整備されたのは鎮海(浙江省)、黄島(山東省)、大連(遼寧省)、舟山(浙江省)の4基地で設備容量は1640万立方メートル(約1億0300万バレル)。第2期と第3期の設備容量は各2680万立方メートル。07年12月の鎮海基地を皮切りに基地の稼動は始まっている。中国国家統計局が昨年11月20日、初めて公表したSPRは1243万トン(約9200万バレル)だった。
中国の原油輸入量は増加してきている。13年は2億8000万トン、14年は3億0800万トンと初めて3億トンを超えた。今年も4月と7月が月次で3000万トンを超えており、年間輸入量は前年を上回る過去最高水準を記録する見通しだ。
中国は石油価格の下落を利用して「爆買い」的に輸入をしているとの指摘があるが、輸入自体は増えているものの、備蓄基地ができたときに輸入量がどっと増えたとは感じられない。やや乱暴な考察だが、原油生産量と輸入量の合計から原油加工量(製油所で加工される消費量)を引いた差はプラスで、その一部が備蓄に回っているものと思われる。
14年12月から15年3月までの4カ月間をとってみると、原油生産量と輸入量の合計は1億8100万トン(13億2700万バレル)。原油精製量1億6800万トン(12億3000万バレル)を引いた1300万トン(9700万バレル)が増加し、その一部がSPRに回ったとみている。
◆メタル取引所が乱立、主体は個人投資家
中国ではここ2〜3年の間にメタル取引所があっという間に幾つも設立されて、マーケットに大きな影響を与えている。従来からある上海期貨交易所(上海市、1990年11月開業)や無錫不銹鋼交易中心(江蘇省無錫市、2006年11月開業)に加えて、11年には泛亜有色金属交易所(雲南省昆明市)と南方稀貴金属交易所(広東省深せん市)、12年には天津貴金属交易所(天津市)、上海有色金属現貨交易中心(上海市)、13年湖南有色金属交易所(湖南省長沙市)、14年には包頭希土産品交易所(内モンゴル自治区包頭市)と陝西有色金属交易中心(陝西省西安市)が開業した。
このうち泛亜有色金属交易所では今年7月、資金が枯渇し、投資家に資金を返還できなくなって個人投資家による抗議行動が起こった。現在、ほとんど取引がストップしていると言われる。
包頭市はレアアース(稀土類)の一大産地。報道ベースでは、包頭希土産品交易所では今年、20万トンの取引がされると予測されている。今年の世界全体のレアアース需要は10万トンちょっとなので、世界需要の2年分の取引が1年間で行われる状況になっている。
メタル取引所で取引しているのは個人投資家がほとんだ。それも今年になって口座を開設した人たちばかりなので、知識も経験もない中で飛びついて取引をしている。グルーバルでみたらかなり危険な状況が生まれている。現在は非鉄金属の国際需給に影響していないが、今後どうなるかについては注視していく必要がある。(長澤孝昭)
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