八牧浩行 2015年11月23日(月) 18時25分
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多くの食品がまだ食べられるにもかかわらず、さまざまな理由で捨てられている。廃棄される予定の食品を引き取り、ホームレスなど必要としている人たちに届ける、ボランティアベースの「フードバンク」事業が急拡大している。写真は東京都内のスーパー食品売り場。
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「飽食の時代」といわれる。多くの食品、食料がメーカーや農家、個人などから、まだ食べられるにもかかわらず、さまざまな理由で捨てられている。一方で、世界の発展途上国はもちろん、日本にも十分な食事をとれない人々が多く存在するのも事実。そこで、廃棄される予定の食品を引き取り、必要としている人たちに届ける、ボランティアベースの「フードバンク」事業が急拡大している。
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景気低迷下で新自由主義的な政策運営が続く日本では、所得格差が拡大し、日々の食事にも事欠く貧困層が急増。安全で十分な栄養含む食べ物を手に入れることのできない人が200万人以上に達する。にもかかわらず、賞味できるのに廃棄される「食品ロス」は年間約800万トン(農水省調べ)と、コメの生産量とほぼ同じというから驚く。
日本初のフードバンクNPO法人(ボランティア団体)としで2002年に設立された「セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)」の活動家は「その一部にでも配布することができれば、何十万人もの人が食べ物を手に入れることができる。日本は世界的な『もったいない』運動をリードする節約の国と誇る人がいるが、現実は真逆です」と嘆く。
フードバンクの仕組みは、食品加工工場、輸入業者、卸業者、スーパー、コンビニ、農家、個人などから、食用として活用できるのに廃棄される食品を無償で引き取り、これらを児童養護施設の子供たちや母子家庭、各種福祉施設、さらにホームレス(路上生活者)らの元に配送する―というもの。
品質には問題がないものの、包装不備や過剰在庫などで市場での流通が困難になり、商品価値を失った食品を活用できる。防災用として備蓄していた食品の賞味期限が迫ってきたり、展示会・イベント・試食会・スポーツ大会等で飲食品が余ったりした際もフードバンクの出番となる。
「食品ロス」の元凶として、特に問題となるのが、日本の流通業界に厳然と存在する「3分の1ルール」。(1)スーパーなどへの納入期限は製造日から賞味期限(食べられる期限)までの期間の3分の1時点まで(2)販売期限(店が販売可能な期限)は製造日から賞味期限までの3分の2時点まで―というルールだ。このルールでは賞味期限が3分の1以下のものは販売できず廃棄しなければならないことになる。
フードバンクの担当者は「このルールは商品を過度に回転させる悪しき商慣行。まだ食べられるものを捨てるのは本当にもったいない」と憤る。さらには「在庫切れや店頭での品切れとなるのを恐れるメーカー側が大量に製造して店に納品、大半のデパート、スーパー、コンビニなどでは、売れ残っても、価格政策やブランドイメージ維持のため値引き販売をせずに、廃棄を選択している」と語る。キャベツなど農産物が豊作で大量に余った場合でも、農業補償金を目当てに廃棄するケースが目立つ、という。
こうしたフードバンク活動は欧米では政府の保護があり、社会に浸透しているが、日本ではまだ馴染みが薄いため活動規模が小さい。農水省、消費者庁など関係官庁が縦割り状態なのも阻害要因となっている。
こうした中、菓子、調味料など加工食品の返品や廃棄を減らすため、長年の商慣習を見直す動きもある。食品メーカー、卸、小売りの20社あまりが参加して、「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」が発足。納品期限を延長する実験が行われている。
食品メーカー幹部は、「賞味期限が長く残っているのに出荷できなかったり、返品されたりするケースは少なくない」と指摘。「加工食品に定められている賞味期限は、おいしく食べられる目安であり、多少期限を過ぎても安全に支障はない」と強調。食べられる時期である「消費期限」と混同しないよう要望している。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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