八牧浩行 2015年9月30日(水) 17時23分
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30日、タイのシハサック駐日大使は記者会見し、「中国が平和的に台頭できるようにスペース(余地)を与える必要がある」と強調、現在の世界秩序の中で中国にもっと「発言権」を与えるべきだとの考えを示した。また南シナ海への自衛隊派遣に反対する考えを明らかにした。
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2015年9月30日、タイのシハサック駐日大使は日本記者クラブで記者会見し、中国の台頭について、「大国となった中国は、我々が守っている規範やルールを尊重しなければならず、地域の平和と安定に責任を伴う」と指摘した上で、「中国が平和的に台頭できるようにスペース(余地)を与える必要がある」と強調、現在の世界秩序の中で中国にもっと「発言権」を与えるべきだとの考えを示した。
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また安保法案成立により、日本の自衛隊が南シナ海を監視する案があることについて、「既に米国第七艦隊やベトナム、マレーシア、フィリピン、中国の船が活動しており、南シナ海での過剰な軍事化は避けなければならない。外交的な問題の解決がより複雑になってしまう」と述べ、自衛隊の派遣に反対する考えを明らかにした。発言要旨は次の通り。
タイに今必要なのは強い経済である。経済の質をレベルアップし、企業から信頼されるようなプロジェクトを推進していかなければならない。従来のような労働集約型経済を構造改革し競争力を向上させ、成長の軌道に乗せていく。「中所得国の罠」(中所得国の仲間入りを果たした後、人件費の上昇や後発新興国の追い上げにより経済が停滞すること)から脱却しなければならない。
人口6億人の ASEAN(東南アジア諸国連合)共同体が今年末にスタートする。タイはその中心に位置し、多くの国と国境を接しており、経済統合による恩恵を最も受ける。インフラ制度上の連結性が進み、中国南部からベトナム、ミャンマー、ラオス、タイに連なる「経済回廊」ができる。
中国の台頭が注目されている。中国高官と話すと、中国国内の課題があまりにも大きいので「平和的台頭」を強調している。大国となった中国は、我々が守っている規範やルールを尊重しなければならず、地域の平和と安定に責任を伴う。ただ、中国が平和に台頭できるようにスペース(余地)を与える必要がある。
中国は地域の平和と安定、繫栄に関し決定が下される際には、自国の言い分も受け入れるよう求めている。今の世界秩序の中で中国に「発言権」を与えなかった場合に、中国が今の世界秩序から出て発言する懸念があるが、それをわれわれは望んでいないからだ。
アメリカのアジアへのリバランス(回帰)は歓迎するが、(中国)封じ込め政策にならないよう望みたい。封じ込めは平和と安定にはマイナスに作用してしまう。日本、米国、中国、韓国が調和のとれた関係を構築していくことを期待したい。米中間には、大きなテーマが存在しているので、両国は互いに協力していく方法を編み出している。
日本の安全保障の拡大は軍事的なものに限られるべきではない。今まで外交を通じて貢献してきており、日本メコン首脳会議も地域の安定と繫栄に向け大きな貢献となる。
中国は台頭してきている大国であり、安全保障面でも役割を拡大したいと考えていることを理解し、受け入れていかなければならない。一方、中国は、行動をとった時に相手国がどう反応するかをきちんと見定める必要がある。相手国からみればルールを順守した行動ではないと見られがちだ。中国はすべての問題を主権の問題であり、核心的利益であると言って自分たちの行動を正当化しているが、(一方的な)行動に対してはリアクション(反発)がある。
南シナ海問題は、原則の尊重が必要。ASEAN中国間で南シナ海に関する「宣言」が存在しており、これを尊重していく。現在行動規範についても作業が進められている。航行の自由や国際法の尊重、自主的な活動抑制、強制的な行動の回避などのほか、問題があった時には平和裏に当事者の間で解決することが考えられている。
(自衛隊が南シナ海を監視する案について)南シナ海では、既に米国第七艦隊やベトナム、マレーシア、フィリピン、中国の船が活動しており、南シナ海での過剰な軍事化は避けなければならない。外交的な問題の解決がより複雑になってしまうからだ。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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