<中国は今!>経済改革、国有企業改革は「パクリ文化」からの脱却が急務

Record China    2015年9月20日(日) 13時41分

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中国の習近平指導部は最近、国有企業のなかでも中核をなす「央企(中央企業)」155社を今後、業界ごとに合併を進め、最終的に約20社程度に集約するという国有企業の改革案を発表した。写真は中国の工場。

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中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は最近、国有企業のなかでも中核をなす「央企(中央企業)」155社を今後、業界ごとに合併を進め、最終的に約20社程度に集約するという国有企業の改革案を発表した。数十万にも及ぶ国有企業のなかでも最優秀の企業群をさらに絞り込むという荒療治だけに、習近平指導部は最近の中国経済の停滞傾向に強い危機感を抱いていることがこの改革によって切々と伝わってくるようだ。

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これについて、北京の大手経済専門紙の編集委員は「中国経済の落ち込みが激しいのは中国独自の『パクリ文化』のせいだと思うのです」と意外なことを口にする。

彼によると、中国経済の原動力は重厚長大な国有企業で、エネルギーや自動車、鉄鋼、流通など国有企業グループで占められており、民間企業が付け入る隙がない。

民間企業も手をこまねいているばかりでなく、なんとか市場に食い込もうと新しい技術を開発し、国有企業に対抗しようとする。だが、ことごとく大手企業に新技術を真似されてしまうので、民間企業が育たないという悪循環に陥っている。

中国に進出した日本企業が独自の製造技術をコピーされ、気が付いたときには、同じような工場があちこちに建ち、偽物が市場に流通しているという話はよく聞く。例えば、有名なのは新幹線技術だ。もともとは日本製だったものが、中国は「自主開発の国産高速鉄道」と銘打ち、いまでは東南アジアなど海外諸国に売り込みをかけている。

「国内企業はもっとひどい。文句を言っても相手にされません。裁判に持ち込んでも、国家権力がついている国有企業が負けることはあり得ません。結局、泣き寝入りしかないのです」と編集委員氏はこう説明する。「その結果、中国では創造的発明や新技術を開発するよりも、上手に真似をした方が手っ取り早くて、金も稼げるというわけで、『パクリ文化』が幅を利かせているのです」というのだ。

それでも、中国が「世界の工場」として安い製品を輸出できた時代は良かったが、いまや人件費も高くなり、外資はアジアの新興国に工場を移転。高い「メード・イン・チャイナ」製品は売れなくなり、経済環境は悪化の一途をたどっている。

それを象徴したのが、8月下旬の世界同時株安だった。上海株価指数が8月下旬の3日間で22%も下げて3000を下回り、2月上旬の年初来最安値の3049をも割り込んでしまった。6月12日に記録した5200の最高値から、わずか70日あまりで2200ポイントも落ち込んでしまったのだ。

日本の高度成長期には、いまや日本を代表するソニーやホンダなど町工場といってもよい中小企業が大成長を遂げた。トヨタも戦後、大きく飛躍した。日本では新技術が保護され、創造性が大きく向上したが、いまの中国には、こういった独自技術を持つ企業がないのが実態だ。

中国政府は「創新」という言葉を持ち出して、企業に「独自技術の開発」を訴えるが、すでに「模倣」や「パクリ」に慣らされた企業側は数年間、下手をしたら10年も20年もかかるような「創新」に乗り出す心構えはないということだろう。

このため、習近平政権としては中核企業の合併による業界再編に乗り出さざるを得なかったといえる。

このため、「中国が経済低迷から抜け出すにはパクリ文化からの脱却が急務」との彼の主張は極めて明快で分かりやすい。願うらくは、中国企業が「パクリ文化」を恥と思うような企業体質に早く変化してほしいということだ。

◆筆者プロフィール:相馬勝

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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