Record China 2015年8月15日(土) 8時5分
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7月に北京に取材に出かけた。ちょうど私の北京滞在中の8日には一時、前日終値から8%あまり下落。終値は5.9%安の3507.19と暴落し、中国経済に冷水を浴びせかけた格好だ。
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急いで、市中心部の証券会社に行ってみたら、客でごった返しており、口々に「アイヤー。どうしたんだ。これで大損だ」と叫んでいた。しかし、次の日再び同じ証券会社を訪ねたが、大幅な下落が影響したのか、ほとんど客はいなかった。
上海株式総合指数は何とこの1年間で2.5倍もの上昇を記録していたが、上海、深セン両証券取引所合計の株式時価総額は株価ピークの6月12日から比べると日本円換算でおよそ450兆円も激減。中国の国内総生産(GDP、昨年)のほぼ3分の1が消滅したことになる。
このため、中国政府の金融当局の対応はまさになりふり構わぬものだった。
追加利下げ、取引手数料の引き下げ、年金基金による株式への投資上限引き上げ、信用取引の規制緩和、信用取引の追証規定の廃止、新規株式公開(IPO)の停止、適格外国機関投資家(QFII)の投資枠拡大、持ち株比率5%以上の大株主や企業役員の持ち株売却を6カ月禁止、政府系ファンドや証券会社を動員しての買い支え、さらには警察による 「悪質な空売り」の捜査など、何でもありだった。
何より、上海・深セン両市場の上場銘柄の71%に当たる1300以上の銘柄を取引停止にしたことは、世界の市場関係者を驚愕させた。
金融当局がそこまでしたのは、株価が下げ止まらなければ、都市部に住む約2億人といわれる投資家が動揺し、政府の経済政策に対する批判の動きや抗議デモなどの社会不安が中国全土で拡大することが予想されたからだ。
中国共産党のイデオロギー・宣伝部門を統括する党中央直属機関の中央宣伝部が8日、中国の株価急落を受けて、国内の報道機関に対して「株式市場の問題が政治化するのを回避し、(批判の)矛先が共産党や政府に向かうのを防げ」と指示する緊急通達を出していることが分かっている。
これは習近平(シー・ジンピン)指導部が株価の問題が経済政策批判や、抗議デモなどの社会不安に発展しかねないと危機感を強めていることに他ならない。
中国国家統計局は7月15日、4〜6月の国内総生産(GDP)が前年同期比7%増だったと発表したが、これも株価の暴落騒動を受けて、「市場を安心させようとした意図的な数字ではないか」との憶測が飛び交った。
このため、国家統計局の担当者が「GDPのデータは正確で、意図的に引き上げられたことはない」と発言。これをロイター通信社が報じたことで、市場では発表された数値への疑念が強まり、東京市場では午後にかけて中国景気に影響を受けやすい銘柄が下げ足を速めた。
このような中国の統計数字に関する疑惑が以前からささやかれていた。とりわけGDP数値は地方政府が報告する各種の経済指標をまとめることから、中国首相の李克強(リー・カーチアン)氏自身が遼寧省トップ時代、「信用できない。信用できるのは鉄道貨物輸送量、輸入数量、電力消費量の3つだ」と発言するなど、この3指標は「李克強指数」と呼ばれているほどだ。
この李克強指数をみると、軒並みマイナスか、大幅な鈍化傾向にあり、まさに今回の株価暴落騒動に象徴されるように、中国経済の落ち込みは明らかだ。
例えば、2010年には前年比20%増だった工業生産額も今年に入って5〜6%増と伸び悩み、中国経済の屋台骨を担う国有企業にいたっては2%程度まで落ち込んでいる。消費も減速しており、自動車販売は4、5、6月と3カ月連続で前年比マイナスを記録。このような経済の停滞で個人所得や貯蓄が伸び悩む一方、銀行融資は前年比15%近く増加しており、インフレ懸念が高まっている。
このようななか、中央銀行の中国人民銀行は商業銀行の預貸率の上限規定の撤廃を決めた。景気減速下で資金供給拡大を促進する狙いがあるが、この背景には外貨流入が減少し、企業収益が悪化していることがある。
中国は11、12日の2日間続けて人民元を切り下げたが、こんなところにも中国経済の悪化が如実に表れているようだ。
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。
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