<日本人の中国観光は復活するか(上)>北京政府が日本人客呼び込みへアノ手コノ手、「医食同源・鍼灸」目玉に―団塊の世代や女性グループ狙う

八牧浩行    2015年6月27日(土) 13時25分

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日本を訪問する中国人観光客が急増、“爆買い”が話題になっているが、訪中日本人観光客は極端に低迷。日本人観光客を招致しようと中国政府や北京市が躍起になっている。経済活性化のほか人的交流で日中関係の改善につなげたいとの思惑もあるようだ。写真は北京同心堂。

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日本を訪問する中国人観光客が急増、“爆買い”ぶりが社会現象になっているが、中国への日本人観光客は極端に低迷。そこで、日本人観光客を招致しようと中国政府や北京市が躍起になっている。中国経済活性化のほか人的交流で日中関係の改善につなげたいとの思惑もあるようだ。

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5月の中国人訪日客は昨年の2.4倍の38万7000 人。今年通年では昨年(241万人)の2倍以上の500万人に達すると予測されている。ところが中国への昨年の日本人訪問客は、同5.6%減の271万人。その大半がビジネス関係者とみられ、観光客は極端に落ち込んでいる。円安・人民元高が大きな要因だが、この間の日中関係の緊迫した政治状況や北京など大都会の環境悪化も背景になっている。北京五輪や上海万博があった2000年代には多くの旅行プランが発売され、旅行代理店店頭に案内パンフレットがあふれたが、最近はほとんど見かけない。

こうした中、中国への日本人観光客を招致しようと、中国国家観光局と北京市旅遊発展委員会が躍起になっている。先に、東京都内のホテルで「北京観光資源説明会・展示会」を開催した。このイベントには日中の観光に携わる官民代表や一般市民約300人が参加。北京市旅遊発展委員会の代表が「北京には故宮や万里の長城などの世界遺産はじめ観光資源が多くある。サービスの向上に努めているので、安心して中国においで下さい」と呼びかけた。日本政府の関係部門や旅行会社、地方自治体などを訪問して協力を求めるほか、観光プロモーション、セミナー、観光展示会などの開催やコンベンション誘致など様々な文化交流事業を展開中だ。

北京市の日本人観光客誘致戦略は、団塊の世代を主なターゲットとしている。資産と時間に余裕のある60代半ばのこの世代が関心を持つと期待するのは、健康と食の世界である「医食同源」「東洋医学鍼灸」「風水パワースポット」、「東洋美術」「中国風テーマパーク」など。この世代が求める健康や癒やしの世界に狙いを定めている。さらに、美容に関心を持つ女性グループも期待できるとしている。

◆伝統の「中国医薬」を売り出す

その一つ医食同源・薬膳・鍼灸は、中国4000年の歴史から生まれた中国伝統の医食融合の世界である。北京市に点在する中国医療の医薬博物館、大学、研究所、漢方薬店、植物園、伝統的中華レストランを総動員し、日本からの観光客を呼び込もうとしている。

北京西北郊外の中国医学科学院・北京薬用植物園はその一つ。一般客も利用できる薬膳レストラン「膳福苑御衛中」は園内にある。薬膳の素材の大半は園内で栽培されたもの。獲れたばかりの新鮮な薬用植物を調理し、客の健康増進に役立てる。メニューは、ナツメの種をくり抜いて、朝鮮人参を詰めたものと、山芋をおろして蒸した料理。一カ月塩水につけた玉子の卵黄を霊芝で包んで蒸した料理。薬草の天麻にドレッシングをかけたサラダ。鹿肉のベーコン。薬草・鬼針草のニンニク炒めなど、体の調子を整える料理や、免疫力を高める料理、抗鬱効果を期待できる料理。美容効果のある料理、滋養強壮に役立つ料理もある。

 

同科学院薬用植物研究所の季国強・副研究員は「健康を普及させるために世界に薬膳を広めたい。日本の専門家と協力して、漢方の効能についても研究を進め、より理解を深めていきたい」と説明する。ダイエットや美容に効果的な「杜中茶」として人気が高い杜中は、木の皮も漢方薬として使用、葉の成分にも注目していると言う。

北京同仁堂は中国漢方業界の老舗ブランドで、本店は新しい観光地「前門」通りにある。1669年の創立後、1723年に宮廷御用薬商となり、皇室に出入りする特権を与えられ、188年の長きにわたり歴代の8人の皇帝に仕えた。「力を合わせて、徳を積み世の中の健康事業に尽くす」との創業精神に沿って、多くの代表的な漢方薬、健康食品を開発販売。世界最大の漢方薬メーカーに成長した。その製品は手足麻痺、脳卒中後遺症、脳の炎症、悪性腫瘍等に、免疫力アップに効く「安宮牛黄丸」老年病の治療と予防に効果「補腎益寿カプセル」など800種以上に及ぶ。日本人に人気の高い冬虫夏草は強壮、抗がん効果があるとされ人気商品の一つ。いずれの漢方薬も、デパートのような本店や各地店舗で購入できるほか、世界中に輸出され愛用されている。

北京は中華料理の本場。長寿や滋養強壮に効果がある貴重なきのこだけを食材とする「養生きのこ鍋」など薬膳料理レストランも多い。もちろん北京ダッグを売物とする専門店や羊肉火鍋、宮廷料理レストランも豊富だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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