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大きなジレンマに陥っている中国にどう対応するか?=「戦後70年首相談話」はチャンスとなる―田中均元外務審議官

八牧浩行    2015年5月28日(木) 7時42分

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27日、田中均・日本総研国際戦略研究所理事長(元外務審議官)は日本記者クラブで講演し、中国などとの外交努力を倍加すべきだとの考えを強調。中国は大きなジレンマに陥っておりこれにどう対応するかが重要との認識を示した。

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2015年5月27日、田中均・日本総研国際戦略研究所理事長(元外務審議官)は日本記者クラブで講演し、「安全保障には軍事的対応と外交努力の両方が必要」と指摘した上で、中国などとの外交努力を倍加すべきだとの考えを強調。中国は大きなジレンマに陥っておりこれにどう対応するかが重要との認識を示した。8月に出される首相の戦後70年談話について、「心からお詫びをすることが不可欠」と語った。同氏の発言は次の通り。

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東アジアで緊張が高まる背景には中国の台頭をはじめとする国力のバランスの変化などこの地域の大きな構造的な変化がある。日本は「一国平和主義」から、集団的自衛権を容認する「積極的平和主義」に舵を切ったが、安全保障には軍事的対応と外交努力の両方が必要であり、(中国などとの)外交努力を倍加すべきだ。2050年の世界をにらみ米国をこの地域のレジデント(居住)パワー、ステイクホルダー(利害関係者)として関与させることも重要だ。

日本にとって、8月に出される首相の戦後70年談話が重要でありチャンスにもなる。これから10年、20年耐えうるビジョンを打ち出すべきだ。(近隣諸国との)違いを乗り越え協力できる分野を拡大することが重要だ。同時に村山談話、河野談話、小泉談話を引き継ぎ「日本は国策を誤り、植民地主義に基づいて損害を与えた」と心からお詫びをすることが不可欠であり。そこから相互信頼が生まれてくる。

アジアには文化・価値観、歴史などにおいて同一性がないため、EU(欧州連合)のような包括的な統合は難しい。中国が中心になる統合もできないが、ただ放置すれば地域の平和と繁栄は築けない。金融、貿易、エネルギー、投資など分野ごとに協力をしていく「重層的機能主義」を推進すべきだ。例えば経済連携ではRCEP(東アジア地域包括的経済連携)などを利用する。機能ごとに協力関係を深める必要がある。

米中の連携は進んでおり、米ソが対立した冷戦時代とは違い、経済を中心に相互依存関係がある。米中戦略対話も定期的に行っており、今年は6月に開かれる。日本も中国とどう向き合うか、中長期的な視点で考えなければならない。

WTOなどグローバル化に合わせて経済発展してきた中国が今抱えている大きなジレンマは、(1)これまでと同様(米欧中心の)1つの世界の中で発言権を高め利益を上げていくのがいいか、(2)米国に抗して独自の世界秩序をつくっていく方策がいいか―である。これにどう対応するかだが、わが国としては(1)が望ましく、中国自身がその方向に向かうよう圧力をかけていくべきだ。その場合、圧力をかけすぎると、中華思想の国なので(逆効果となるので)バランスを取る必要がある。

中国の南シナ海での岩礁埋め立ては、米国の出方をテストしていると思われる。米国では国防総省が中国の埋め立て現場ら12カイリ以内に立ち入りを計画しているのに対し、ホワイトハウスは軍事衝突を恐れて避けるべきだと反対している。

中国主導のアジアインフラ銀行(AIIB)に欧州各国はじめ57カ国が参加することになった。日本は米国が参加しないからとの理由などで参加に消極的だが、もっと主体的に関与し参加すべきである。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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